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投資と企業分析

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2019年3月期宅配業界の業績(ヤマトと佐川の決算)

   配送業界の売上の1位のヤマトと3位の佐川の2019年3月期の決算を見てみたいと思います。数字は概算で出しますので、詳細は実際の決算をみてください^_^

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   まずは、ROEを比較してみたいと思います。ROEは株主への責任をどのくらい果たしているのかを示す指標となります。純資産もヤマトの方が多いようですね。

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    面白いことにROEを算出すると、売上も純資産もヤマトに劣る佐川の方が圧倒的に優秀な数字を叩き出しています。親会社に帰属する当期純利益の額にしても、佐川の方が177億円多くなっています。では、その差がどこからくるのか、ROEを分解して見てみたいと思います。

 

ROE=売上高当期純利益率×総資本回転率×財務レバレッジ

 

   実際、それぞれの数字を算出してみます。

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     財務レバレッジは高すぎても良くないので置いておくにしても、利益率、効率どちらも佐川が優れています。利益率に関しては、佐川はヤマトの2.4倍以上の数字となっています。

  

   つぎは、この利益率の違いがどこからくるのかみてみます。

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   まずは、売上総利益率を比較してみると、この時点で、佐川の方が3.6ポイント高い数値になっています。

   売上総利益は売上高から売上原価を差し引いた数値なので、売上原価に差がありそうです。実際に見てみると、佐川の方が売上原価率を3.2ポイント抑えることができています。

   ここで気になったのが、売上原価率の高さです。小売業の決算も調べていたので、比較すると配送業界は売上原価率が高い業界である事がわかります。

   さらに気になったのが、売上原価と販管費の違いです。とりあえず、それぞれの言葉の意味を調べました。

 

売上原価...商品やサービスを生み出すのために「直接」必要とした経費。

販管費...商品やサービスを販売するのにかかる費用。

 

   売上原価の「直接」というところが大切だと思うので、販管費は自ず間接的な費用がこれに当たることが多いと思われます。

   配送業の場合、「サービス」にあたるのが「商品を配送すること」なので、配送する際の人件費やガソリン代など、費用の大半がサービスに直接結びついているので、売上原価に含まれると思われます。一方販管費は、会社の広告宣伝等がそれにあたると思われます。

   おもしろいことに販管費はヤマトの方が0.9ポイント抑えていますが、売上高営業利益率では、佐川が2.7ポイントも大きな数字となっています。売上高営業利益は売上総利益から販管費を引いた数値になります。

   佐川に関しては、人件費やガソリン代はしっかり抑えつつ、広告宣伝にはしっかりお金を投資しているようですね。

 

   続いては、ヤマトと佐川の安全性に関する指標を見てみたいと思います。

   バランスシートの中で短期的に最も重要な指標が「手元流動性」です。 倒産危険度を測るのに一番重要な指標ともいえます。なぜなら、お金がなくなってしまったら、企業は倒産するからです。

   株式投資で長期投資をする場合に、企業の安全性を分析する場合は、必ずこの指標はチェックしといた方がいいです。

   では、実際に算出してみます。

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   基準としては、大企業なら1ヶ月、中堅企業なら1.5ヶ月、中小企業なら1.7ヶ月分あればいいかなと思われます。 

   ヤマトも佐川も大企業なので、1ヶ月分あれば安全だと思われますので、両社とも安全だとおもわれます。

 

   さらに別の短期の安全性の指標として、当座比率を見てみたいと思います。当座比率とは流動負債より当座資産の方がどれだけ多いのかを見る指標となります。当座資産は一年以内に現金化できるもの、流動負債は一年以内に支払わなければならないお金を意味します。

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   一般的に120%以上あると安全なようです。(業種によっても違うようですが)この基準で考えると、佐川は比較的安全で、ヤマトは少し低めかなと言った印象です。

 

   続いて、長期の安全性について、自己資本比率と、固定長期適合率で見てみたいと思います。

   まずは、自己資本比率を算出します。

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   両社ともほぼ変わらない水準ですね、自己資本比率は業種によって、かなり違います。配送業界は50%前後なのかもしれませんね。

 

   次に固定長期適合率をみてみます。

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   長期の資産は長期の資金でまかなわなければなりません。長期の資産が固定資産、長期の資金が自己資本にあたります。

   両社とも、固定資産を自己資本のみでは賄うことができていませんが、固定負債を足すことで賄うことができています。長期適合率の基準としては、100%未満なら安全となります。

 

   安全性を示す指標を見る際の優先順位は手元流動性当座資産固定長期適合率自己資本比率の順番となります。繰り返しになりますが、景気の悪化や経営が悪化したときに、コントロールできる資金(手元流動性)が会社の命運を握ります。 

 

   最後にキャッシュフローを見てみたいと思います。

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   二社とも本業でしっかりとキャッシュフローを稼ぐことができており、その範囲で投資を行っており、フリーキャッシュフローを稼ぎだしています。ヤマトの方がフリーキャッシュフローが三倍以上になっています。現金を手元に残しておく戦略かもしれないですね。このことからも手元流動性が高い理由がわかります。一方の佐川の方は稼ぎだした多くを投資にあてる戦略かもしれないですね。

   両社とも堅調な経営がみてとれます。